雪国の風土と郷土の伝統工芸“牛首紬の話 ” 98

isikawanokinsan2007-03-08

今日の朝起きると、湿った重い雪がかなり積もったいた。あわてて雪で滑らないように玄関までのアプローチにマットを敷なおした。 妻が大事にしている庭の鉢植えも再度玄関に入れたり。又スコップを出してきたりでどこの家でも、忘れた頃に思いがけずに降った“春の雪”お陰で又余分な仕事が増えた。


今日は福井に行く予定だったが、急な用件で金沢の市内に行くことになった。急いで家を出て市内に向かうが、突然の雪でどの車ももたもたして混雑していた。雪は時々激しく降る時もある。今日は確か“高校入試の日”(2日目)なのに受験生もかわいそうであるが、これもこれからの人生と考えると『このくらい』 と思わなくては、自分で強く生きていくことである。


用事を済ませ、もう一軒寄っていこうとしたが、雪も降るしあまり気が乗らないので出直すことにした。家にのすぐ近くまで来ると、突然右から自動車が出てきた。あわててブレーキを踏んだが少し雪でスリップした。 しかし衝突は免れた。飛び出して来た建物は牛首紬をつくっている工場である。


この牛首紬は石川県の最南端で“雪だるままつり”で知られる白山のふもと“白峰”(現白山市)に伝わる県指定の無形文化財で国の伝統工芸品に指定されている。現在は石川県の白山市鶴来(つるぎ)地区と白峰地区で作っており、すべて手織りである。


起源は定かでないが、昔(今から約850年ほど前)平家の落人(源氏一族とも伝えられる)が今はダム(手取ダム)に水没した白峰村桑島地区に逃れた時、村人に機織(はたおり)を伝えたのが始まりと言われている。白峰で作られる“牛首紬”は、結城・大島紬と並ぶ日本三大紬と呼ばれ、その特長は弾力性と伸張性に富んで、シワになりにくい。また糊もたせをしないので保温、吸湿性、通気性にすぐれ着心地が良い。 


しかし一番の特長は、めちゃめちゃ丈夫らしい。別名を『釘抜紬』と呼ぶようだ。これは釘にかけても破れず、反対に釘が抜けるほど丈夫だからついたと言われる。秘密は牛首紬の横糸に“玉繭”(たままゆ)と呼ばれる繭から挽いた糸を使うからだと聞く。繭玉とは二匹の蚕(かいこ)が一個の繭を作ったもので、普通の繭より大きく、二匹の蚕の糸が不規則に重なりあっているからで、これを取り出す熟練の職人の技術が必要らしい。最近は染色にも工夫がされ地元白山のクロユリなども使用されているらしい。


いずれにしても、桑を育て蚕をかい、そしてそれを手織りで丹念に織り込む地道な作業が必要で、和紙などとともに雪深い山村ならではの産業である。それだけに風合いもすばらしいが価格もそこそこする。私も牛首紬のネクタイはしてみたいと何時も思っていいる。(本物は1万円以上はする。)


以前白峰の『白山工房』で工場見学(展示などしてあり見ることができる。)したことがあるが、中ではまさに家内工業そのままの作業が地元のおばさん達の手で進んでいた。何でもオートメーションの時代だからなおさら貴重であり、そこで作られた物は価値があるのである。 “手作りの味”残したい日本の伝統工芸の一つであろう。


牛首紬の紹介HP http://www.kougei.or.jp/crafts/0115/f0115.html

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★くつろぎの広場
・着ぶくれじゃ、ないことバレる、春が来る
・釘をみて、うなずいている、パチンコ屋
・会議中、寝てない証拠に、咳ひとつ
 
                           (万能川柳より抜粋)
★歳時記
・淡雪の、つもるつもるや、砂の上    (久保田万太郎



☆久しぶりに見る春の雪景色 (撮影:3月7日朝)