春の訪れと『花嫁のれん』 96

isikawanokinsan2007-03-06

今日は朝から肌寒く小雨模様、夕方にはこれが雪に変わり春の到来を拒むかのように小雪が時々舞う一日であった。 午前中打ち合わせのため金沢市内に出かけたとき、とあるホテルの前に来ると、楽しそうに話す若いカップと出合った。


すれ違いざまに二人の会話が聞こえたが、どうも結婚式の打ち合わせに来ていたらしい。そう言えば春は結婚式のシーズンでもある。若い二人にとっては今までとまったく違った新たな生活が始まろうとしているのだ。


私も自分の結婚式は勿論だが、一昨年は長男の結婚式も経験した。親族同士の紹介から結納そして結婚式と昔と比べ簡素化されたとは言え、今まで関係なかった家同士のお付き合いなかなか大変である。それぞれが違った環境に育ったわけだから多少の違いは当然であろう。 昔は結婚と言えば本人たちよりも家と家との結婚みたいなものだからそれは大変な事だったようだ。亡くなった私の父母のように結婚式当日になって初めて相手の顔を見て『この人が私の夫(妻)になる人かぁー』と思ったと聞かされた。まったく笑い話である。  幸いにも今は当人同士が優先だから少しは楽である。それだけに離婚も早いようだが・・・・


ところで結納から結婚に至るまでのしきたりは全国地区によりバラバラであるが、大きくは関西(京都)風と関東(江戸)風とに区別されるみたいである。あまりにいろいろなしきたりがあるのでいちいち紹介は出来ないが、今日は最近北陸地方や加賀・能登等に伝わる花嫁のれん“加賀水引細工”についてちょっとだけ触れてみたい。


縁談が進みいよいよ結納である。この時の品には日本にはどこにでも“水引”をかけるが、北陸(金沢)の水引はひときは豪華である。金箔・銀箔(金沢は日本の99%の生産地)をふんだんに使い、おなじみの松竹梅・鶴亀・鳳凰などが豪華に細工される。水引は日本人が大事にしてきた感謝の気持ちを表したものであり、今でもこの水引細工は金沢の伝統工芸品として贈り物の心づくし気風が残るものとして盛んである。


次に婚礼の朝、花嫁が結婚式を前に嫁ぎ先の仏壇に手を合わせる浄土真宗が盛んな地ならではの『仏壇参り』の風習がある。 この時迎える側は仏間の前にかけるのが花嫁のれんである。花嫁はそれをくぐって仏間に入り『今日から、この家の嫁(人)として入ります』と先祖に向かって仏壇に手を合わせ報告するのである。普通はそれから一週間ぐらい夫婦の部屋の前にかけ『お部屋見舞い』と言って、両家の親戚の女性が訪れ、嫁入り道具など見ながら祝福するのである。


花嫁のれんには親が娘に“のれんのように従順であれ”の願いが込められていると聞く。 七尾市一本松通り商店街”や金沢の町中にはよくこの花嫁のれん』の展示会が開かれる事がある。私も何度か見に行ったが、これも時代とともに布の材質や形模様など少しずつ変わってきており当時の庶民の生活が何となく伝わったきた覚えがあった。


今は結婚後は親との別居が増えており、この風習も少なくなってきたが、格式を重んじる家や旧家などでは普通に行われているようだ。

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★くつろぎの広場
【ふるさとクイズ】
1.演歌歌手北島三郎のヒット曲『加賀の女』。歌の中の主人公が『君』と出逢ったのはどこ?
  ①兼六園  ②金沢駅  ③香林坊  ④主計町(かずえまち)
2.次の中で、金沢の正月菓子の一つ“福梅”のあんに加えてあるのは何?
  ①飴  ②寒天  ③片栗粉  ④蜂蜜
3.加賀友禅の技法で実際にあるのはどれか
  ①玉虫  ②胡蝶  ③虫食い  ④飛蚊

                    (金沢検定より、答えはページの最後)
★歳時記
・吹きはれて、またふる空や、春の雪  (太 祇)



☆ご近所に家の庭に咲いた梅と雪 (撮影:3月7日早朝)

※クイズ答え
1.③  2.①  3.③